イルカ9時過ぎに目が覚めた、三島型の本船、エンジンの振動も無く静かで乗船中である事を忘れる事がある。顔を洗い歯を磨き着替えてブリッジに肩振りに出かけた。サードオフィサー(3等航海士)の当直だ、北陸出身の独身だ、私の顔を見るとよく、次席さん、彼女紹介して下さいよ! なかなかの男前で気の良い好青年だが、クオーターマスター(操舵手)のKさん、福井県出身、マージャンがめっぽう強い、なかなかのコーヒー通で2種類のコーヒーの粉をブレンドしてコーヒーを入れてくれた。左舷を見ると何やら大きな魚が飛び跳ねた、、おー、クジラか、? すると2匹、3匹、、、どんどん増えてくる。イルカの大群だ、何10頭ものイルカが本船と一緒に泳いでいる、アラビア海へようこそ、、、! 本船を歓迎しているようだ、と言うかスピードも同じくらい、遊ばれているって感じだな、、2-3分で姿が見えなくなった。

霞峰丸 001-2クオーターマスターが、次席さん、コーヒーもう一杯どうですか? と言う。おい、どうしたの、いやにサービスが良いじゃないですか、暫くすると、、本船宛てに電報有りませんかね? 実はセイロン島(現スリランカ)のドンドラ岬以西は組合との協定で直接日本の海岸局とは通信しない事に成っている、当社の場合はフランスの海岸局と主に通信をする。この辺りに来ると日本との通信は大変なことは大変なんだ。日本との時差も結構ある、又途中に高いヒマラヤ山脈もある、、?????(これはウソ)。奥さんが丁度出産予定で予定日を既に3日ほど過ぎていて心配なようだ、気持ちは良く解る。実は昨日から長崎無線局/JOSに本船宛ての電報がある事は解っている、クオーターマスター、午後からの私のワッチの時に聞いてみますよ、、12時に当直の終わったKさん、昼食後さっそく無線室にやってきた。早速に長崎無線局と交信をした、比較的伝搬状態も良く簡単に交信出来た、やっぱりKさん宛ての電報だ。無事に女の子が生まれたそうですよ、母子ともに元気だって、、、Kさんのあの嬉しそうな、涙ぐんだ顔が今でも思い出される。今では人工衛星経由でリアルタイムに連絡が取れる世の中だ、、、